An intersection with diagonal crosswalks






高耶は一人、街中を歩く。
ビルの合間から眩しい光が射してくる。

「・・・眩し・・・・。」

まだ東のそんなに高くないところにある太陽は、高耶の後ろに本人と同じくらいの背の影を作った。
優しく風が吹き、高耶の髪を乱して通りぬけていく。

今日は、
あの男と久しぶりに待ち合わせをして出かける約束だ。

「待ち合わせの時間まで随分あるな・・・。」

それはそうだ。わざと待ち合わせの時間よりだいぶ早く来たのだから。
ここは二人の思い出の街。
二人が共に暮らすようになるまではここでよく待ち合わせをした。
最近は待ち合わせをすることも滅多になくなり、この街にくることがほとんどなくなって久しい。
思い出になってゆくこの場所に少し寂しさを感じた。



ぶらぶらと歩いていると、どんどん人が増えていく。
大きな交差点のところで、ちょうど信号が赤になり足をとめた。
高耶の記憶にある、この街はいつもざわめいている。
騒がしいのは苦手なのに、不思議とこのざわめきは嫌いにはれなかった。
車の音とか、人の声とか。
いろいろな音が混ざりあった、人間達の生きる音がここには満ちている。

なぜか安心するような。

ふと、その理由に思い当たり一人赤面する。
このざわめきを思い出せば、記憶の中でいつも側に彼がいた。


ざわざわ

いつのまにか信号が変わり、動き出した人波に現実に引き戻される。
高耶は流されるように横断歩道を渡り始めた。
そしていつものようにスクランブルの真ん中で空を見上げる。
ビルに切り取られた狭い空。
それでも、スクランブルの中央から見える空はほんの少し広くて。

この癖はいつもスカした顔をしてるあの男のものだ。
はっきり言って不自然なこの行動を、無意識でやっていたらしい。
最初はおかしいと言って笑っていたのに、いつのまにかうつってしまった。



見慣れた駅のロータリーが見えてくる。
懐かしい景色。
時間に遅れて改札から息を切らしてでてくる自分が、それを笑顔で迎える背の高いあの男が、見えるようだ。
駅前の時計を見ると待ち合わせの時間15分前。

もうすぐだ。もうすぐ、思い出じゃない、あいつに逢える。

他人から見れば飽きるほどいつも顔を合わせている男に一刻も早く逢いたい。
焦る気持ちを落ち着かせるため、高耶は深く深く深呼吸をした。


---*---


お前を待つのは苦手

期待よりも不安に負けて泣きそうになる

お前に向かう情熱は

一生懸命すぎて 自分でも手におえない



だから 愛しい人

早く 早く来て

俺の名前を呼んで 見つけ出して 救い上げて

お前の腕で



どんな人込みでも

お前を 一瞬にして見つける自信がある

お前以外が霞む瞬間



もうすぐ もうすぐだ


お前の存在が

この思い出深い街さえも背景に変える時を待っている





[終]

しんえ 著
(2000.10.27)


[あとがき]
やっと、書き終わった・・・。長編でもないのになんでこんなに時間がかかるかな。
実はこれ、高耶さんBD小説になるはずだったもの。
手後れになったので、書き直しました。だって、来年まで取っとくのもねぇ・・・・。
最後のあたり、密かにnameと対になっています(というか、なんというか。)
さて、これはある歌を元にして書きましたが、誰のなんて曲でしょうか〜?
あんま原形とどめてないけど。・・・わかるんかいな。
よし。正解者、先着一名様にはなにかプレゼントを・・・。


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