金曜夜7時の選択






「ただいま帰りました」

いつもなら、高耶は玄関のドアを開ける音で出てきて「おかえり」と言ってくれるのに、今日はなんのリアクションもない。リビングの電気はついているのだが………。

(またソファで寝てしまったのだろうか?)

怪訝に思いつつリビングのドアを開けると、そこには熱心にTVを見ている高耶がいた。

「あ、おかえり、直江」

ちょうどコマーシャルに入ったところで、ようやく高耶が振り返る。

「ただいま帰りました。何を見てるんですか?」
「ドラ○もん」
「は………?」
「この時間にやってたんだな、これ。子供の頃すっげー好きでさ。もう毎日見てた。オレのところにもドラ○もん来ないかなーって。の○太みたいな奴になれば来るかも、なんて本気で考えてたんだ」

再び始まったドラ○もんに見入りつつ、夢心地のような口調で呟く。あまりにも熱心に高耶が見ているので、直江は少し妬けてきた。

「ねえ、高耶さん」
「なんだ?」

高耶は振り返らない。

「もしドラ○もんが本当にいるとして、私とドラ○もんどちらか選べと言われたら、どうします?」
「決まってるだろ」

――――どっちに?

美しく気高いタイガースアイは、うっとりとドラ○もんを見つめたままだった………。





[終]

紅雫 著
(2000.07.22)


[あとがき]
「KECHONIST」投稿作品第三弾。
どこでもドアが欲しい。あれがあったら、毎日ちゃんと学校行くのに。
そういえば、ドラ○もん占いをやったら「の○太」だった。ますますもって、ドラ○もんが欲しくなってきた…。


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