厚かましくも高耶の家に入り浸り、ずうずうしくも誕生日プレゼントの請求をする千秋に、高耶は半切れ状態で怒鳴った。
「ったくケチな大将だよなぁ」 「意味?」と高耶が訝しげな顔をすると、千秋は「べっつにぃ?」と言っていつものようにはぐらかした。
意味がない。他の奴のじゃ意味がない。
そんな千秋の心情を、高耶が知る由もない。千秋も告げる気など全くなかった。
「そんじゃ、金がかかんなきゃいいのか?」
しぶしぶと頷く高耶に、千秋はにやりと笑った。 「キスして」
高耶の脳にその言葉が到達するまで、優に10秒はかかった。 「………はぁ!?」
何を言ってるんだこいつは、といった表情で高耶が聞き返してくる。
「キ・ス・し・て」 高耶は真赤な顔で怒鳴り散らすと、足音も荒く台所へ逃げてしまった。 「………ちぇ〜っ。やっぱ駄目か」
千秋は唇を尖らせて言ってみるが、言葉ほど残念そうではなかった。どうせ無理だと、もとから分かっていたことだから。 (シャイだからねぇ)
まあ仕方がないか、と千秋は呟いた。 (顔が見たかったんだよ)
本心は告げないが。 千秋は台所の方を見つめながら、そっと微笑んだ。
帰る、と言い出した千秋を送って、高耶は千秋のアパートの近くにある公園までついてきた。 「……千秋!」
突然高耶に呼ばれ、何事かと振り向いたその時――――。 「…誕生日だからな」
それだけ言うと、驚いて声も出ない千秋を離し、くるりと踵を返す。
「どうせなら、口にして欲しかったなぁ」 予想通りの高耶の反応に、自然と笑いが込み上げる。 (ほんっと可愛い奴!)
これだから手放せない。他の奴には渡せない。
[終]
紅雫 著 [あとがき] 初のちーたか小説です。ちーが高耶さんにメロメロ(笑)という、私にしては本当にめずらしい話。まあ誕生日ですから(←理由になってない)。 誕生日おめでとう千秋〜…ってもう身体がないよぉ!(泣) |
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