オモチャの使い方






最近、高耶は買ったばかりのデジタルカメラに凝っている。
だが物を撮ることにはすぐ飽きてしまって、近頃は直江ばかりを撮っていた。
そんなある日のこと。

「直江……」
「なんですか?」

いやに深刻な高耶の声に、直江は驚いてコーヒーを煎れる手を止めた。

「直江……実は、オレ……」
「どうしたんですか、高耶さん」

俯いて苦しそうに言いよどむ高耶に、直江は嫌な予感を覚える。
ソファに座る高耶に歩み寄ろうとしたとき、高耶がひたと直江の顔を見つめて、はっきりと言った。

「実はオレ、他に好きな奴が出来たんだ」


びしぃっ!


優しい笑顔を保っていた顔面筋肉がひび割れて砕け落ちる音が、リビングに鳴り響いた。
その瞬間、高耶はすかさず隠してあったデジカメを構えた。


カシャッ


軽快な音がして、シャッターが切られる。

「うっそだよ〜ん♪」
「………………………は?」

いままでの深刻な顔はどこにいったのか。にっこりと笑ってカメラを構えている高耶に、直江は間抜けな声を出す。

「お、やったぁ、すっげぇ変な顔!千秋達に送ってやろーっと♪」

出来上がった画像を覗き込んで、高耶は嬉しそうに歓声をあげた。そのまま鼻歌でも歌いそうな様子で、自室へと向かってしまう。おそらくメールで知り合いにバラまくのだろう。
残された直江は、呆然と佇んだまま呟いた。

「……高耶さん………あなたにとって、私はいったいなんなのですか………?」



【おもちゃ (1)子供が持って遊ぶ道具。(2)もてあそぶためのもの。なぐさみもの】





[終]

紅雫 著
(2000.07.26)


[あとがき]
「KECHONIST」投稿作品第五弾です(笑)。
「デジカメ欲しいよぅ」という願望の元に作られたお話。
別名「激写!直江信綱」編。どんな顔してるかは御想像にお任せします。


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