Princess of Snow White






昔々あるところに、小さな国がありました。
その国にはたいそう美しい男のお姫様がいました。お姫様は高坂弾上忠昌信という立派な名前がありましたが(爆)、雪のように白い肌をしていたため、「白雪姫」と呼ばれていました。
白雪姫を産んですぐに王妃様は亡くなってしまっていため、白雪姫が18歳の時に、新しいお后様が迎えられました。
その名も柿崎晴家(笑)。
新しいお后様が来たその日から、白雪姫の楽しい毎日が始まりました。
「高坂ぁー!!あんたまた人の化粧品勝手に使ったわね!」
城にお后様の怒声が響き渡ります。
白雪姫はとっても素敵な性格(笑)をしていたため、新しいお后様をからかうのを日課にしていました。
「まあ、そう怒るな。どう見ても私のほうが似合っているだろう?」
「どこがよっ!この変態!」
毎日このように微笑ましいおいかけっこが繰り返されていました。

そんなある日、お后様は怪しげな「浄波璃鏡」という不思議な鏡を手に入れました。
この鏡は、自分の姿を映しながら
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
と聞くと、
「それはあなたです」
と実に都合のいい答えを返してくれるしろ物でした(笑)。
ただ、この鏡は対になっていました。そして、片方の鏡に映ったものはもう片方の鏡にも見え、しかも言葉を伝えることも出来るのでした。
そんなことは知らないお后様は、片方の鏡を高坂に取られてしまっても、気にも留めませんでした。
しかし、ある日お后様が鏡に向かって
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
と尋ねた時、突然鏡に高坂が映ってお后様に嘲笑を浴びせかけました。
「ふっ。私に決まっているだろう」

びしぃっ!

稲妻がはしり、突如念の嵐が吹き荒れます(笑)。
「こ〜う〜さ〜か〜!!今度という今度は許さないわよ!!」
堪忍袋の尾が切れたお后様は、家来の狩人を呼びつけました。
「長秀!今すぐあの馬鹿を殺してきて!」
「…なあんで俺なんだよ。自分で行けよ、面倒くせえ」
態度の悪い狩人です(笑)。
その言葉にお后様の顔が更に歪みます。
「いいからさっさと行けぇ!!」
さすがに目前で念がはじけ、お后様の恐ろしい形相が迫ってきてわめいたのは恐かったのでしょう。
狩人はしぶしぶ白雪姫を森へ連れ出すと、殺そうとしました。
「わりいな。晴家の奴そうとうストレス溜まってるみたいでよぉ。ここは大人しく殺されてくれや。苦しませねえからさ」
ふざけた口調で、しかし目だけは殺意に溢れて狩人は笑います。
「そう言われて、大人しく殺される奴がいると思うか?」
しかし白雪姫は落ち着いて嘲り笑い返します。
まあそうだろうな、と狩人はどこか嬉しそうに言いました。
「安心しな。墓くらいは作ってやるさ」

激しい念の応酬が始まりました。
白雪姫はとても強かったのですが、そこは狩人も負けていません。(なんてったって夜叉衆NO.2の実力。)
白雪姫は徐々に押されて、ついに崖から落ちてしまいました。
「…あちゃあ。これじゃ死体拾えねえな。ま、しょうがねえか」
狩人はあっさりと呟くと、お后様に報告するため城に帰っていきました。
一方落ちたと思われた白雪姫は、かろうじて崖のすぐ下に引っかかっていました。
傷ついた身体でようやく這い上がると、森の中をさ迷いはじめます。
「ふん。これしきで死ぬわけがないだろうが。詰めが甘いのだ、馬鹿め」
…いつでもどこでも憎まれ口を忘れない白雪姫でした(笑)。

しばらく歩くと、森の中に大きな家が見えてきました。中には人の気配があります。白雪姫は一晩泊めてもらうことにしました。
その家は、「北條」という小人の7人兄弟の家でした(爆)。
「…小人というわりには普通サイズですな」
「単なる設定上の呼び名です。気になさらないよう」
答えたのは氏政です。長男の彼は、白雪姫の境遇を聞き、快く泊めてやることにしました。
「どうぞ、お好きなだけご逗留下さい。足りないものがあれば用意させますゆえ」
「お心づかい感謝いたしまする」
北條はかつての友好国です。(それがなんで小人なんだということは置いておいて。)一応礼儀正しくしておこうと思った白雪姫でした。
ふと、末っ子の高耶に目が止まります。
高耶はどこか白雪姫を警戒しています。しかし兄の決定に異を唱えられるはずも無く、探るような瞳で白雪姫を睨んでいました。
そんな高耶にふっと嘲笑が漏れかけますが、白雪姫はそれをそっと抑えると、美しく微笑みながら言いました。
「しばらくの間、よろしく頼みますぞ。景虎殿」

数日間、白雪姫は大人しく怪我の養生をしていました。が、怪我が治ってくると再びいたずら心が沸き上がります。
白雪姫は浄波璃鏡を取り出すと、覗き込みました。
鏡の中ではお后様が上機嫌で鏡に向かって話しかけていました。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
白雪姫はにんまりと人の悪い笑みを浮かべ、自分を鏡に映しながら言いました。
「私に決まっているだろう。愚か者」
――――鏡の向こうでは、お后様が怒り狂っていました(笑)。

「…長秀。あんた高坂の奴、殺り損ねたわね…」
地獄の底から響くような声で、お后様は狩人を問い詰めます。
「おっかしいなあ。ちゃんと殺ったと思ったんだけどな」
狩人は悪びれません。
「――――いいわ。今度は私が自分で行く」
「最初からそうしてりゃあいいんだよ」
狩人の呟きに、お后様はぎんっ!と目を光らせます。
「言っとくけど、あんたは減俸だからね!!」
ひでえ!とわめく狩人を置き去りに、お后様は毒リンゴを持って、白雪姫の元へと急ぐのでした。

一方、森では…。
「それでは我々は少し出かけてまいるので、留守のほうよろしく頼みます」
「お任せ下さい。どうぞごゆっくり」
7人の小人(爆)は仕事のため家を空けることになり、白雪姫は独り留守番をすることになりました。
7人が出て行ってからしばらくすると、なにやら怪しい人影が家に近づいてきます。それは、変装したお后様でした。
「すみません。お水を一杯いただけませんか?」
「スポーツドリンクでもよろしいかな?」
白雪姫はお后様にとっくに気がついていました(笑)。しかし、知らないふりをして親切に応対します。
「ありがとう。お礼にこのリンゴを差し上げましょう」
お后様は毒リンゴを差し出します。
「おや、これはどうも。ところでやはりこれは毒入りですかな?柿崎殿」
白雪姫の嘲笑に、お后様の作った笑顔が凍り付きます。
「…分かってんなら話は早いわ。さっさと死になさい!」
お后様は白雪姫の口に、強引にリンゴを押し込みました。
さすがにここまで強行するとは思わなかった白雪姫は、あっさり口に入れてしまいました。
途端、喉が焼け付くような感覚に襲われ、次の瞬間には白雪姫は倒れてしまいました。
「ふん。手間取らせるんじゃないわよ、まったく」
…それじゃまるっきり悪役です(笑)。
お后様は浄波璃鏡を取り戻すと、満足して城に帰りました。

北條の7人は、帰ってきたとたん死体が転がっているのを見て、パニックに陥ります。が、原因が毒リンゴだったと分かり、胸をなで下ろすと(ひでえ…)葬式の準備に取り掛かりました。
…所詮は他人ってことなのでしょうか…。

葬式は昼間に行われました。北條一族のほか、参列者も無い寂しい葬式は、突然の闖入者に襲われます。
それは、隣の国の王子(爆)直江信綱でした。
王子は馬から下りて、葬式の会場に近づくとはっとしたように足を止めました。
「なんて…美しい…」
その言葉に全員が振り向きます。
「このかたは森の向こうの城に住む白雪姫といって…」
聞かれもしないのに氏政が白雪姫の説明を始めます。実は死体を引き取ってもらいたかったのでしょうか…?
その説明を遮って、王子はずかずかと近づいてくると、突然腕を取って言いました。
「あなたが欲しい。結婚して下さい!」
…その視線の先には当然のごとく高耶さんがいました(笑)。
「おのれえ!貴様三郎から手を放さんか!」
そして当然のごとく氏照兄が刀を抜き怒鳴りつけます。
「あなたは三郎というのですか」
王子は聞いていません。
「え?いや、ホントは高耶だけど…」
いまいち展開についていけていない高耶さんは律義に返事をします。
「高耶さん…。いいお名前ですね。私は直江信綱といいます。どうぞ直江とお呼び下さい」
「なおえ…?」(←ひらがなモード開始!)
危うくらぶらぶモード突入というところで、新たなる声がしました。
「直江よ。連れていく相手が間違っているのではないか?」
それは死んだと思われた白雪姫でした。
「高坂!貴様死んだのではなかったのか!?」
「ふっ。私がこれしきのことで死ぬわけが無かろう。貴様がこの近くに来ていると聞いてな、からかってやろうと思って待っていたのだ。さあ、私を貴様の嫁にするがいい(笑)」
「誰が貴様なんぞ嫁にするか!私が連れていくのは高耶さんだ!」
「おのれ、貴様などに三郎をやるわけにはいかん!今すぐ手を放せ!」
もはや何が何やら分からなくなりつつある現場に、更に人影が…。
「おお!なんと美しい姫だ。そなた名はなんという?」
それは、同じく国境を接する甲斐の国の王、武田信玄公でした。
「白雪姫と申しまする」
誰もが見惚れるような笑みを浮かべて、白雪姫が答えます。
「ほう。そなたがかの有名な女装癖のある…」
ひどいことを言いながらも、信玄は白雪姫を熱く見つめます。
「よし、気に入った。そなた、わしのものになれ」
…どうやら信玄公は白雪姫を見初めたようです。
「あなた様は…?」
「わしは武田信玄だ。そなたを国に連れ帰ろうと思ってな」
「ほう。するとかの好色狸と有名な隣の国の…?」
姫もたいがい失礼でした。しかし、信玄はそんなことは気にも留めません。
「そうだ。わしの元へ来ないか?」
「そうですな…。よく考えれば、この私が直江ごときの妻になるというのも、もったいない話(笑)。あなた様なら面白い」
こうして白雪姫は隣の国へお輿入れすることになりました(笑)。
「ではな、直江。せいぜい景虎殿に逃げられぬよう、精進することだ」
「余計なお世話だ!」
相変わらず冷笑を浮かべて自分をからかう白雪姫を睨みつつ、直江は高耶さんをしっかりと抱きしめました。
「三郎を放さんかあ!!」
「兄上〜!」
しかし、王子と小人では立場が違い過ぎます。高耶さんはあっさり連れ去られ、無理矢理お后(爆)にされてしまいました。

その後・・・。
綾子は白雪姫がいなくなり、愛しい夫と二人で毎日幸せに暮らしました。
長秀もそれなりに楽しく暮らしています。
直江は高耶さんを無事GETできて、幸せじゃないはずありません。
高耶さんは無理矢理奥さん(爆)にさせられたとはいえ、直江と一緒で幸せです。
残された北條兄弟は、いつか弟を取り返すことを心に誓い、日々仕事に励んでいました。
そして武田信玄の元へ行った白雪姫は…。
「御館様。やはり攻めるならこの国がよろしいかと…」
日々権謀術数を巡らし、楽しく暮らしましたとさ(笑)。





[終]

紅雫 著
(1999.12.27)


[あとがき]
作者突っ込みがうるさいですね(笑)。けれど突っ込まずにはいられなかった。
最初は高坂を直江の奥さんにして、直江いじめ小説にしようかと思ってたんですが、7人の北條小人兄弟(笑)を出したら話が変わってしまったという…。


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