シルバーリング






『おめでとう、高耶さん。あなたをこの世に下ろしてくれた神に感謝します。』
「〜〜〜ありがとう。でも大袈裟なんだよ、お前は〜。」

0時を過ぎてすぐに交わされる会話。
仕事で、どうしても23日に一緒にいられない直江からの電話だった。

『寝てましたか?すみません。起こしてしまいましたね。』
「ううん。起きてた。」

お前の電話を待ってた。
決して言わないけれど。0時になるまでずっと待ってたんだ。

予想通りの直江の行動に高耶は顔をほころばせる。本当は不安だった。こんなに期待して待っていて電話がこなかったらどうしよう、と。
いつもは早く寝ろなさい、と言われても遅くまで平気で起きてるのに、電話を待っているとどうしようもなく時間が経つのが遅く感じた。こんなにも不安なのは期待する事を覚えさせたお前が悪い、とここにはいない直江に悪態をついたりもした。
だから0時ちょうどに電話がかかってきて、それでもちょっと不安な気持ちで電話に出たら直江で、すごくほっとしたのだ。

『高耶さん、ベッドの下、見てみて。』
「ベッドの下?」

ベッドの下の、直江の誕生日の時に高耶が誕生日プレゼントを隠していたのと同じところ、から出てきたのは小さな箱。

――――――この大きさの箱に入ってるものといったら・・・。

『見つかりました?』
「うん。」
『誕生日プレゼントです。本当は直接渡したかったんですけど・・・。開けてみて、高耶さん。』

最近、高耶がシルバーアクセサリーを好きでちょくちょく買っているのを知っていたのだろう。
そこには高耶の予想通り、シンプルな艶消しのシルバーリングが入っていた。

「つけていい?」
『もちろんですよ。』

高耶の眉がひそめられる。

「・・・・・・・・なんで。」
『??どうかしましたか?』

急に声のトーンが下がり、不機嫌そうになった高耶の考えが直江は分からない。

「・・・・いや、何でもない。ありがとな。中指用のゆびわ。」
『サイズは合いますか?』
「ああ。中指にぴったりだ。」
『・・・高耶さん。』

直江はやっと何故高耶が不機嫌になったのかわかった。
指輪が薬指のサイズじゃなかったのが気に入らないらしい。
薬指には高耶が嫌がって(恥ずかしがって?)つけてくれないだろう、と下手に気を回したのがいけなかったようだ。
いや、実際に薬指にぴったりの指輪を贈ったら、恥ずかしい、つけられない、と言ったのかもしれないが。

「お前、よく俺の中指のサイズ知ってたな。」
『え・・・ええ。』

どうやって高耶さんの機嫌をなおしたものか、と直江は考える。

『もちろん薬指のサイズも知ってますよ。次は高耶さんが気に入った物を買いたいですからね。今度いっしょに買いに行きましょう。』
「行く!!」

今までの不機嫌さは何処へやら、高耶は元気いっぱいに返事をしてしまった事にあとから気が付く。しまったと思った時にはすでに時遅し。

『・・・可愛いですねぇ。私が帰ったらすぐにでも行きましょうね。」

電話から、直江のクスクス笑う声が聞こえる。嬉しそうな気配まで伝わってくるようだ。

高耶が悔し紛れに言ったセリフは

「薬指は右手にもあるんだからな!」





[終]

しんえ 著
(2000.08.09)


[あとがき]
変な終わり方!!
まぁ、それはいいとして(いいのか?!)、甘々仕立てです。
とか言いつつ、ちゅうの一つもしてないし、愛してるの一言も無いんですけど・・・。
しかぁし!直江がまたもやイイ目みてる!!
まぁ、最近紅雫がけちょんづいてるしいいでしょう?


目次


サイトに掲載されている全ての作品・画像等の著作権は、それぞれの製作者に帰属します。
転載・転写は厳禁させていただきます。
Copyright(c)2000 ITACHI MALL All rights reserved.