「寒いなぁ…」
不満そうに口唇をとがらせても、ぱっと人目をひく顔立ちが醜く崩れる事はない。むしろ美人過ぎるためのとっつきにくさが消え、可愛らしい印象に変わる。 「ねーさんっ!ごめん、遅れた!」 目の前に突然現われた青年に、綾子は一瞬目を丸くするが、すぐに怒ったような顔をしてみせた。
「おっそーい!こんな寒い日に女を待たせるなんて、どういうつもりよ?」 腰に手を当ててぷりぷりと怒る綾子に、高耶は気まずそうな顔をして、後ろにあった左手を前に持って来た。 「これ」
ぽんっと渡されたブーケに、綾子は再び目を丸くして高耶を見つめた。
「ねーさんが誕生日だって話したら、美弥が絶対プレゼントは花束にしろって言うからさ」
ホワイトピンクのバラを中心にしたブーケは、花嫁が持つように可愛らしくアレンジメントされていて、男の高耶が持つには恥かしくてたまらなかったことだろう。 「ありがとう、景虎。すごく嬉しい…」
ようやく満面の笑顔を浮かべた綾子に、高耶もほっとして微笑んだ。 「誕生日おめでとう、ねーさん」
[終]
紅雫 著 [あとがき] 綾子姉さんのお誕生日小説です。 久しぶりにえらくまともな小説を書いた(爆)。高耶さんと綾子姉さんのらぶらぶ(?)デート、一度書いてみたかったんですよね。 原作ではやっと織田から解放されたとはいえ、まだまだ辛い事ばっかりですが(というか、今の原作で辛くないのって信長公と譲くらい…?)。 それでも綾子姉には最後には幸せになって欲しい。笑って欲しいと思います。 お誕生日おめでとう、綾子姉さん♪ |
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