20世紀最後のプレゼント T






もうすぐ高耶の誕生日がやってくる。
今年は何をプレゼントしようか。
直江は楽しそうにTVを見ている高耶の横顔を見つめながら、一人思い悩んでいた。

(毎度毎度花束じゃつまらないからな。だが時計はバレンタインに贈ったばかりだし、スーツでは滅多に着てくれないし。やはり今年は指輪か?だがこれも恥かしがってつけてくれない可能性が大きい。高耶さんが遠慮せずに「これが欲しい」と言ってくれればいいのだが。……そういえば、去年の誕生日にホテルのスウィートを予約したら「おまえがいれば他に何もいらない」と言ってくれたんだ。あの時の高耶さんは本っ当に可愛かった。ベッドの上でもずいぶんと盛り上がったし。またあの台詞を聞いてみたいものだ……)

妄想が広がるにつれ、直江の鼻の下はどんどんと伸びていく。だが高耶は気づかない。もし気づいていたなら、飼い犬に対する教育のし直しを検討したことだろう。
さっそく今夜も盛り上がるべく、直江は巧みな言葉の罠を仕掛けた。

「ねぇ、高耶さん。もうすぐ高耶さんの誕生日ですね」
「そうだな」

どこか上の空で高耶が答える。

「今年はプレゼント、何がいいですか?」

直江の計画では、「別に何もいらない」という高耶に、高い物を次々と示し、最終的には「おまえがいれば他に何もいらない」という言葉を引き出す予定だった。
が、それは甘すぎる期待である。

「んー、じゃあ、ドラ○もん」
「は………?」

予期せぬ答えに、直江の目が点になる。よくよく注意すれば、TVからは聞き慣れた大山の○代の声が流れてきていた。

(しまった。今日は金曜日……)

直江は自分の迂闊さに舌打ちしたい気分になった。
だがしかし、今更ここで引き下がる気にはなれない。自分はドラ○もんなどに負けるわけにはいかないのだ。400年の愛はハンパじゃないのである。
引きつった笑顔を浮かべたまま、直江はなお言い募った。

「そうですね。ドラ○もんは23世紀になったら買ってあげますよ。今年は、何が欲しいですか?」
「じゃ、ドラミちゃん」
「高耶さん…………………(涙)」

TVには、元気に飛び跳ねる猫型ロボット2体。
直江の望む答えには、まだまだ1億光年ほど遠い金曜日の夜。
一人悲しむ家臣を目にも留めず、主君は今日も楽しく過ごすのだった。





[終]

紅雫 著
(2000.07.24)


[あとがき]
「KECHONIST」投稿作品第四弾です。
注:この作品は、先に同作者の『金曜夜7時の選択』を読んでいただいてからお読みいただけると幸いです……ってラストのコメントに書いてどうする(爆)。
直江けちょん的高耶さんBD(直前)小説はいかがでしたでしょうか?まともな高耶さんBD小説のひとつも書かずに、こんなのばっかね、私(爆)。
まあ高耶さんが楽しそうなのでいいことにしといてください。


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