20世紀最後のプレゼント U






ここ最近、直江信綱は不機嫌だった。
とてつもなく不機嫌だった。
理由は高耶の誕生日まで溯る。



「誕生日は何が欲しいか」との問いに、高耶は悩んだ末、最近お気に入りのドラ○もんの抱き枕を所望した。
その時は、
(こんなものを欲しがるなんて、高耶さんは可愛いな)
などと思っていたのだが………。
迂闊だった。
抱き枕という時点で気づくべきだった。
そう、高耶は最近、その枕を抱きしめて眠るのである!
これが不機嫌にならずにいられようか。(反語)

(おーのーれぇぇぇ、たかがドラ○もんのくせにぃいいいい!!)

自分が買った枕に嫉妬する男、直江信綱。

むろん夜の営み(爆)の後は疲れきって直江の腕の中で眠ってくれるのだが、いかんせん昼寝の時はそうはいかない。
高耶は昼寝が大好きである。寝不足であるためだが。
そのとき、直江に出番はない。
高耶は、それはもう嬉しそうに、ぎゅぅっとドラ○もんを抱きしめて眠るのである。
今日もまた高耶がいそいそとドラ○もんを持ち出したのを見て、いい加減直江はキレた。

「高耶さん、あなたは私よりドラ○もんの方がいいんですか」

いきなりの直江の台詞に、高耶は驚いて目を丸くする。

「何言ってるんだ、おまえ」
「どうなんです。はっきり言ってください」
「はっきりも何も……」

高耶は苦笑すると、ドラ○もんを抱いた腕と反対の手で直江の頭を抱き寄せた。

「馬鹿だな。おまえとドラ○もんを比べられるわけがないだろう?」
「高耶さん……」

間近に見た優しい微笑みに、直江の心は一気に浮上した。
高耶はにっこりと微笑んだまま、当然のことのように言った。

「そもそもおまえは犬で、ドラ○もんは猫じゃないか」
「……………高耶さん……………っ(涙)」

主君の深い愛は、今日も変わらない。





[終]

紅雫 著
(2000.08.07)


[あとがき]
「KECHONIST」投稿作品第六弾です。
『20世紀最後のプレゼント』で「直江は何をプレゼントしたのか?」というご質問がありましたので、回答編を作ってみました。
直江がドラ○もんに勝てる日は来るのか?
それとも一生景虎様の犬なのか?
全ては作者と読者の皆様の心次第(笑)。


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