OATH おまけ編 〜やさしくしてね〜






「嫌だ!絶対やだ!!」
「だめです!高耶さん!」

事件の翌日の昼頃、高耶と直江はようやく橘家に帰ってきた。そのとたんの追いかけっこである。

「なんの騒ぎだ?」

こちらに遊びに来ていたらしい長兄の照弘が、呆れたような声で直江に問いかける。
直江は一つ溜息をつき、高耶を追いかけるのを中断すると兄の疑問に答えた。

「高耶さんが薬をつけるのを嫌がるんです」
「薬って…。包帯なんかはもう巻いてたじゃないか」

照弘は、直江が高耶の腕や足に包帯を巻いていたのを見ている。
直江は深く溜息をつく。

「肛門に塗る薬がまだなんですよ」
「……」

照弘は納得したように頷いた。


高耶は内部にひどい怪我を負っていた。そこで内側にも薬を塗らなければならないのだが、散々痛い目にあった高耶は、そこに触られることを極度に嫌がっているのだ。
そしてほとんど動かない身体を無理に動かして、直江から逃げ回っているのである。

「高耶さん。そんなに動いたら、傷口が開いてしまいますよ」

どんなに言って聞かせても、直江が薬を塗ろうとしていることを敏感に察した高耶は、身体に触れさせてもくれない。
まだ満足に歩くことも出来なくて、直江に抱きかかえられて帰ってきたわりには意外とすばやい。
直江はもう一度溜息をつくと、諦めたように言った。

「わかりました。好きにしなさい」

そして高耶に背を向け、自分の部屋に戻ってしまった。





「直江…?」

そぉっと部屋のドアが開く。直江は予想通り高耶が来たことに、心の中で笑みを浮かべる。
だが、表情と声は冷たくしたまま、高耶を振り向いた。

「なんです?」

(怒ってる…)

高耶は直江の冷たい態度に、傷ついた瞳になった。
謝らなければ。けれど、あそこに触られるのはどうしても嫌なのだ。
高耶はそのまま黙り込んで、直江の部屋の戸口に突っ立っている。

直江には高耶の心中が手に取るように分かった。そこで助け船を出してやる。

「そんな所にいないで、こっちにいらっしゃい」

いつものように優しい声に戻った直江に、高耶はほっとして直江に近づいた。
直江は高耶をベッドに座らせると、傷の具合を確かめる。

「ああ、よかった。傷口は開いてませんね」
「うん」

高耶は大人しくされるままになっている。
直江は高耶の髪にそっと触れると、

「何か飲み物をとってきますね」

と言って部屋を出た。

どうやら直江は赦してくれたらしい。高耶はそう解釈した。
ほっとして、直江のベッドにごろんと横になる。

(直江の匂いがする…)

暖かくて、直江の腕に包み込まれているようだ。気持ちがいい。
高耶は、そのまま浅い眠りに引き込まれていった。

「おやおや…」

一方、コーヒーを入れて戻ってきた直江は、眠り込んでいる高耶を見て思わず微笑んだ。

「どうやらこれは必要なかったようですね」

そういうと、小さな薬瓶をコーヒーの脇に置く。それは軽い睡眠薬だった。





「……ん…」

なんだか肌寒くて、高耶は目を覚ました。ぼんやりとした頭で、ゆっくりとまわりを見回す。自分の足元で直江を発見した。

「なおえ…?」
「おや、起きてしまったんですか」

そう言いながら、高耶をうつ伏せにひっくり返した。

「なに?」

この時初めて、高耶は自分のズボンが脱がされていることに気づいた。それだけではない、トランクスも取られている。
慌てて起き上がろうとするが、直江に片手で押え込まれてしまう。もう片方の手が秘所を触った感触に、高耶は鳥肌を立てた。

「嫌だ!!」

暴れるが、逃れられない。
あのときの恐怖が蘇って、高耶は知らないうちに涙を浮かべていた。

「はなせぇっ!」

涙声で叫ぶ高耶にさすがに直江は困って、抱き起こすと優しく涙を拭ってやる。

「高耶さん。薬を塗らないと、治るのが遅くなってしまうんです。いつまでも痛いままなのは嫌でしょう?」
「でも、いやだ…」

涙を浮かべて見上げてくる。

「大丈夫。絶対に痛くしないから」
「嘘だ。痛い…」
「嘘じゃない。私を信じて」

そう言って、涙を唇で掬い取る。そのまま頬に、額に、唇に軽くくちづけ抱きしめて、高耶の反応を待った。

「……本当に、痛くないのか?」

ややしてから、呟くように問いかけてくる。直江は極上の微笑みを浮かべて、優しく言った。

「絶対に痛くしませんよ。優しくするから」

直江には、ひとつの計算がある。ここで高耶の恐怖を取り除いておかねば、後々自分が抱く時に困るのだ。
だからこそ、今は高耶を安心させるために、最大の注意を払うつもりだった。

高耶は直江の微笑みに、覚悟を決めたように小さく頷いた。
それでもまだ震えている身体を抱きしめ、あやすように優しいキスの雨を降らす。しばらくすると高耶はうっとりと直江に身体を預けて、力を抜いていた。

直江は高耶をうつ伏せに寝かせた。そうして、入口を優しく撫でる。最初は強ばっていたそこも、優しい愛撫でだんだんと力が抜けてきていた。
少し緩んできたそこに、直江はくちづけた。濡れた感触に、高耶の腰がはねる。直江はその腰を捕らえると持ち上げた。

「な、おえ…?」

戸惑ったような声がする。直江は構わずに、舌を差し込んだ。

「…なんか、気持ち悪い……っ」
「でも痛くないでしょう?」

確かに痛くはない。けれど性的な経験のない高耶には、快感がわからなかった。気持ち悪さにもぞもぞと動いてしまう。

「動かないで…」

直江の手が高耶の足を押し広げ、内側を愛撫する。
くすぐったさと共に、細かい電流のようなものが高耶の背筋を這い上がった。知らないうちに息が上がり、高耶は喘ぎだしていた。

「ん……っ」

声を漏らす高耶に、直江は愛しさが込み上げる。このまま抱いてしまいたいくらいだが、さすがに怪我を悪化させるのはまずい。

(怪我が治るまでは…)

理性を総動員して耐える。

しばらくすると、高耶の秘所はすっかり緩んでいた。
これならば大丈夫だろう。
薄い手術用の手袋をはめ、その指に薬を塗る。本来ならピンセットのような物で、薬のついた綿を入れるのだろうが、異物を入れるのはさすがにまだ気持ちが悪いだろうと思ったのだ。

高耶はすっかり直江にされるがままになっていた。頬を赤らめ、眉を寄せて目をつむり、小さく喘いでいる。高耶のそこも、後ろへの愛撫で勃ち上がりかけていた。

(我慢だ!)

強く自分に言い聞かせる。そうでもしないと、このまま押し倒してしまいそうだった。
高耶の顔をなるべく見ないようにして、直江は高耶の秘所に薬のついた指をゆっくりと差しこんだ。

「あ…っ!やっ」

舌よりも長い指に、高耶の腰が嫌がって逃げる。

「だめですよ。痛くはないんでしょう?」
「んん……」

痛くはないが、なんだか身体がおかしい。そう、確か男達に乱暴されていた時も、こんな感じがあった。それが快感だとはまだ分からなかったが。
高耶のそこは、異物と判断した直江の指を締めつける。その感触は直江が思っていた以上だった。

(…誘ってるんですか、あなたはっ)

そんなわけないだろう、と自分に突っ込みつつ、指しこんだ指をゆっくりと動かし、内部を緩めながら薬を塗りつけた。

「……はぁ…っ」

高耶は気持ち良さそうに喘ぎ声を漏らしている。
そんな高耶に煽られつつも、その熱をぶつけるわけにもいかず、ひたすら我慢して直江は治療を続けるのだった。





「痛くなかったでしょう?」

終わった後、直江は高耶の髪を優しく梳いてやりながら問いかけた。

「うん…」

高耶はどこかぼんやりとしている。あの後勃ち上がってしまったモノの処理までされ、快感に頭がついていかないのだ。
いまだ快感に潤んだ瞳で、直江を見上げる。

「直江、これまだ続けるのか?」
「ええ、治るまではね」

ふぅん、と呟く。

「痛くなかったから、まあいいか」
「…そうですか」

高耶は良くても、直江は良くなかった。
据膳を食うわけにもいかず、気力で自分を抑えているというのに、高耶はそれを煽るように、どこか恍惚とした表情のままで身体を摺り寄せてくる。引き剥がすわけにもいかず、直江は高耶を抱きしめてやるしかない。

(あと1週間はこれが続くのか)

ある意味地獄だ。だが他の人間にやらせるわけにもいかない。
神に理性の限界を試されている気がしてきた、直江信綱28歳だった。





[終]

紅雫 著
(2000.02.20)


[あとがき]
「OATH その後編」ですが…ギャグです(笑)。なんてくだらない話。そして甘い。甘すぎる。砂どころか砂糖をざーざー吐きながら書きました(苦)。
それにしても、「OATH」の直江は我ながら紳士だと思いますね。高耶さん(の身体←爆)をGETできるのは一体いつになることやら(笑)。
わざわざ発見して読んでくださった皆様方、ありがとうございました♪

追記:こちらのページに「EMBRACE −OATH番外編−」が隠してあります。一応裏小説ですので、読まれる方はご注意を。

【改訂】(2003.10.20)
「EMBRACE −OATH番外編−」は隠れ家に移動したので、こちらからは飛べなくなりました。


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