事件の翌日の昼頃、高耶と直江はようやく橘家に帰ってきた。そのとたんの追いかけっこである。 「なんの騒ぎだ?」
こちらに遊びに来ていたらしい長兄の照弘が、呆れたような声で直江に問いかける。
「高耶さんが薬をつけるのを嫌がるんです」
照弘は、直江が高耶の腕や足に包帯を巻いていたのを見ている。
「肛門に塗る薬がまだなんですよ」 照弘は納得したように頷いた。
「高耶さん。そんなに動いたら、傷口が開いてしまいますよ」
どんなに言って聞かせても、直江が薬を塗ろうとしていることを敏感に察した高耶は、身体に触れさせてもくれない。 「わかりました。好きにしなさい」 そして高耶に背を向け、自分の部屋に戻ってしまった。
そぉっと部屋のドアが開く。直江は予想通り高耶が来たことに、心の中で笑みを浮かべる。 「なんです?」 (怒ってる…)
高耶は直江の冷たい態度に、傷ついた瞳になった。
直江には高耶の心中が手に取るように分かった。そこで助け船を出してやる。 「そんな所にいないで、こっちにいらっしゃい」
いつものように優しい声に戻った直江に、高耶はほっとして直江に近づいた。
「ああ、よかった。傷口は開いてませんね」
高耶は大人しくされるままになっている。 「何か飲み物をとってきますね」 と言って部屋を出た。
どうやら直江は赦してくれたらしい。高耶はそう解釈した。 (直江の匂いがする…)
暖かくて、直江の腕に包み込まれているようだ。気持ちがいい。 「おやおや…」 一方、コーヒーを入れて戻ってきた直江は、眠り込んでいる高耶を見て思わず微笑んだ。 「どうやらこれは必要なかったようですね」 そういうと、小さな薬瓶をコーヒーの脇に置く。それは軽い睡眠薬だった。
なんだか肌寒くて、高耶は目を覚ました。ぼんやりとした頭で、ゆっくりとまわりを見回す。自分の足元で直江を発見した。
「なおえ…?」 そう言いながら、高耶をうつ伏せにひっくり返した。 「なに?」
この時初めて、高耶は自分のズボンが脱がされていることに気づいた。それだけではない、トランクスも取られている。 「嫌だ!!」
暴れるが、逃れられない。 「はなせぇっ!」 涙声で叫ぶ高耶にさすがに直江は困って、抱き起こすと優しく涙を拭ってやる。
「高耶さん。薬を塗らないと、治るのが遅くなってしまうんです。いつまでも痛いままなのは嫌でしょう?」 涙を浮かべて見上げてくる。
「大丈夫。絶対に痛くしないから」
そう言って、涙を唇で掬い取る。そのまま頬に、額に、唇に軽くくちづけ抱きしめて、高耶の反応を待った。 「……本当に、痛くないのか?」 ややしてから、呟くように問いかけてくる。直江は極上の微笑みを浮かべて、優しく言った。
「絶対に痛くしませんよ。優しくするから」
直江には、ひとつの計算がある。ここで高耶の恐怖を取り除いておかねば、後々自分が抱く時に困るのだ。
高耶は直江の微笑みに、覚悟を決めたように小さく頷いた。
直江は高耶をうつ伏せに寝かせた。そうして、入口を優しく撫でる。最初は強ばっていたそこも、優しい愛撫でだんだんと力が抜けてきていた。 「な、おえ…?」 戸惑ったような声がする。直江は構わずに、舌を差し込んだ。
「…なんか、気持ち悪い……っ」 確かに痛くはない。けれど性的な経験のない高耶には、快感がわからなかった。気持ち悪さにもぞもぞと動いてしまう。 「動かないで…」
直江の手が高耶の足を押し広げ、内側を愛撫する。 「ん……っ」
声を漏らす高耶に、直江は愛しさが込み上げる。このまま抱いてしまいたいくらいだが、さすがに怪我を悪化させるのはまずい。 (怪我が治るまでは…) 理性を総動員して耐える。
しばらくすると、高耶の秘所はすっかり緩んでいた。
高耶はすっかり直江にされるがままになっていた。頬を赤らめ、眉を寄せて目をつむり、小さく喘いでいる。高耶のそこも、後ろへの愛撫で勃ち上がりかけていた。 (我慢だ!)
強く自分に言い聞かせる。そうでもしないと、このまま押し倒してしまいそうだった。 「あ…っ!やっ」 舌よりも長い指に、高耶の腰が嫌がって逃げる。
「だめですよ。痛くはないんでしょう?」
痛くはないが、なんだか身体がおかしい。そう、確か男達に乱暴されていた時も、こんな感じがあった。それが快感だとはまだ分からなかったが。 (…誘ってるんですか、あなたはっ) そんなわけないだろう、と自分に突っ込みつつ、指しこんだ指をゆっくりと動かし、内部を緩めながら薬を塗りつけた。 「……はぁ…っ」
高耶は気持ち良さそうに喘ぎ声を漏らしている。
終わった後、直江は高耶の髪を優しく梳いてやりながら問いかけた。 「うん…」
高耶はどこかぼんやりとしている。あの後勃ち上がってしまったモノの処理までされ、快感に頭がついていかないのだ。
「直江、これまだ続けるのか?」 ふぅん、と呟く。
「痛くなかったから、まあいいか」
高耶は良くても、直江は良くなかった。 (あと1週間はこれが続くのか)
ある意味地獄だ。だが他の人間にやらせるわけにもいかない。
[終]
紅雫 著 [あとがき] 「OATH その後編」ですが…ギャグです(笑)。なんてくだらない話。そして甘い。甘すぎる。砂どころか砂糖をざーざー吐きながら書きました(苦)。 それにしても、「OATH」の直江は我ながら紳士だと思いますね。高耶さん(の身体←爆)をGETできるのは一体いつになることやら(笑)。 わざわざ発見して読んでくださった皆様方、ありがとうございました♪ 追記:こちらのページに「EMBRACE −OATH番外編−」が隠してあります。一応裏小説ですので、読まれる方はご注意を。
【改訂】(2003.10.20) |
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