みら〜じゅ源氏小劇場 ―葵の幕―






キャスト
源氏の君=直江/頭の中将=高耶/葵の上=美弥




むかしむかし、平安王朝真っ盛りの宮中に、源氏の君(直江)というそれはそれは見目麗しい公達がおりました。その御方は先の帝のお子様で、今の帝の異母弟でありました。御生母君の位が低かったため、源氏の姓を与えられ臣下となったものの、その権勢は兄帝の御生母の御実家である右大臣家と並ぶほどでございました。

この源氏の君ですが、先に述べた通り実にいい男でございまして、まさしく色男と呼ぶにふさわしい生活をおくっておりました。が、そこはそれ、平安時代の男には、跡継ぎを残すという重要な御役目がございます。当然よい家柄の男にはよい家柄の娘が正室として迎えられるものでございまして、結果源氏の君は宿敵右大臣家の姫、葵の上(美弥)が御輿入れすることになったのです。
葵の上には、たいそう美しい兄上がいらっしゃいました。その御方は頭の中将(高耶)と呼ばれ、宮中では源氏の君と女性方の人気を二分しておりました。源氏の君と頭の中将はライバルでもあり、また仲の良い友人同士でもございました。



さて、葵の上の御輿入れが決まり、その初夜の日。源氏の君は右大臣家にいらっしゃいました。平安時代の結婚は、まず男が女の実家へ行き、初夜を迎えたのち大々的に御披露目するという、夜這い先行型の方式をとっておりました。
それにのっとって、源氏の君は葵の上の御部屋へとしのんでまいったのです。

「…………で、なんでオレの部屋に来るんだよ、おまえは」

頭の中将は、なぜか自分の部屋に忍び込んで来た源氏の君を睨みつけました。

「おや?間違えてしまったようですね。でもまあ、せっかくですから……」
「何がせっかくなんだ。だいたい普通部屋を間違えるか?ってこら、さりげなく押し倒すんじゃない!」
「ここまできて、何もしないで帰れるわけがないでしょう」
「する相手が違うだろーが、相手が!おまえはこれから美弥…じゃなくて葵と結婚するんだろ!」
「おや、高耶さんは私と美弥さんが結婚してもいいと…?」
「ぐ……っ」
「美弥さんも十分可愛らしいですからねぇ。私は別に構いませんよ?」
「美弥に手ぇ出したらぶっ殺す!」
「じゃあやっぱり、高耶さんが私の花嫁ですね♪大丈夫、気持ち良くさせてあげますよ…」
「オレは花嫁じゃないっ!……アッ」

こうして源氏の君は頭の中将を夜這いしてしまい、なぜか葵の上ではなく、頭の中将が源氏の君の元へ御輿入れすることになってしまったのでした。
後年、葵の上は源氏の君よりはるかにまともで優しい旦那様に娶られて、末永く幸せに暮らしたということです。





[終]

紅雫 著
(2000.12.05)


[あとがき代わりの舞台裏座談会]
美弥「せっかく十二単着たのに、台詞が一個もなかったよ」
高耶「オレは台詞なんか一個もないはずだったのに、アドリブだらけでしゃべりまくったぞ(怒)」
美弥「ねえねえお兄ちゃん、美弥可愛い?」
直江「ええ、とっても素敵ですよ、美弥さん」
美弥「わぁい、ありがとう、直江さん♪」
高耶「…てめぇ、今どこから湧いてきやがった」
直江「高耶さんも今度は男役で良かったですね」
高耶「てめぇに犯られなきゃ、もっと良かったんだけどな。っていうか、なんで頭の中将が源氏に襲われてるんだよ。こんな馬鹿な話があるか!」
直江「そんなこと言われても…」
高耶「だいたい、直江が源氏だから悪いんだ。そうだ、今度から源氏は別の奴にするように、監督に直談判してやる!」
美弥「じゃあ美弥は『ちゃんと台詞ください』ってお願いしてみようかなぁ」
直江「では私は……」
高耶「おまえは言うな!なんにも言うな!これ以上口出ししたらぶっ殺す!」

(足音荒く高耶が退場して、閉幕)


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