「お誕生日おめでとうございます、高耶さん」
間近で見つめ合い、柔らかく唇を重ねた。
「もう教えてくれるでしょう?プレゼントは何が欲しいんですか?」 小さく頷いて顔を上げた高耶は、ほんのりと頬を染めて微笑んだ。
「おまえ」 驚いて目をみはる直江に、高耶ははっきりと告げる。
「そう。おまえが欲しい」
直江は、いつも何も欲しがらない高耶が、自分に物を買わせないための言葉なのかと思った。 「もっと欲しい。全部欲しい。今日一日は、オレだけを見て。オレのことだけ考えててくれよ」
潤んだ瞳は、愛しさと哀しみに溢れている。 「私はいつでもあなたのことを考えていますよ。あなたしか見えないし、あなた以外のことを考える余裕なんてない」 どんなに言っても、高耶は哀しい瞳で見つめ続けてくる。
「……おまえ以外は、いらないんだ。欲しいものをくれるんだろう?」
何がそんなに不安なのだろう。
「もちろんです。そんなに言うのなら、今日はもう離さない。あなたが嫌だといっても、この腕の中から出さないから」 強い抱擁に、高耶はようやく安心したように溜息をついた。
それでいい。
甘い囁きに、高耶は嬉しそうに抱きついた。 「キスして」 その通りにキスが降ってくる。 「抱きしめて」 苦しさに喘ぐほど抱きすくめられる。
「『愛してる』って言って。ずっと。オレが飽きるまで。 (壊れるまで――――) 愛しい男の手が身体中を這い回り、意味のある言葉は喘ぎの隙間に消えていく。 「愛している……」 望んだ耳元の熱い囁きに、歓喜の涙を零して震える。 (愛している――――)
この夜が永遠に明けなければいい。 (どうか、神様――――)
絶望と希望の狭間で。
[続]
紅雫 著 |
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