OATH 〜ずっとそばにいる〜


【10】





「高耶さんがいない!?どういうことですか」

車中から帰宅を告げる電話を家に入れた直江は、高耶が行方不明だと聞かされ、思わず大きな声で母親を問いただしていた。

『それがね、買い物の途中でいなくなっちゃったのよ』

しっかりとしているはずの母が、珍しく焦った声をしている。電話口でオロオロとしている母の姿が目に浮かんだ。
直江は自分を落ち着かせるために一度深く息を吸うと、はっきりとした声で母親に問い直す。

「それじゃいなくなってから、そんなに時間は経っていないんですね?」
『多分…。今義弘と冴子が駅前を探してくれているんだけど、見つからないらしくて』
「分かりました。今からすぐに帰ります。ちょうど友人が警察に勤めていますから、協力してもらいましょう。母さんは家で待っていて下さい」

それだけ告げると、直江は慌ただしく電話を切った。
そのまま片手で友人である鮎川の携帯に電話をかける。

「すまないが人探しを頼みたい」
『なんだと?俺は私立探偵じゃないんだぞ!』

怒った声で返されるが、そんなことに構っていられない。

「俺が少年を引き取った話はしただろう。その子がいなくなった。まだ1時間ほどしか経っていないが、なんだか嫌な予感がするんだ。頼む、探してくれ」

珍しくせっぱ詰まった声で頼みこんでくる友人に、鮎川は驚いて思わずちゃかした。

『お前がそんなに焦って、しかも頼みごとしてくるとはな。地震でも起きるんじゃないか』
「何とでも言え。とにかく早く探してくれ。あの人はこの辺に不慣れなんだ。なのにまだ見つからないのは、何かあったのかもしれない」
『…分かった。いなくなったのは駅前なんだな』
「そうだ」
『じゃあその辺から探してみる。その子の特徴みたいのは?』
「年齢は17歳。身長178cmで痩せている。男の子にしては綺麗な顔をしているから、割と目立つはずだ。俺もすぐ合流する」

そう言うともう一度頼んだぞ、と念を押し、電話を切る。
幸いというか、鮎川は少年課担当だ。駅周辺にも詳しい。
それでも直江の焦燥感は消えない。

(高耶さん、何があったんですか)

嫌な予感に胸が締めつけられる。ただの迷子ならいいのだが。
高耶に何かあったらと思うと、いてもたってもいられなかった。
駅前まではあと30分ほどで着くはずだ。直江は込み始めた道路をいらいらと睨みながらアクセルを踏みこむと、できる限りのスピードで向かった。





高耶が連れ込まれたのは、駅から車で20分ほど離れた廃工場の一角だった。その周辺は普段から人気も無く、高耶を襲った男達の溜まり場になっていた。

車が止まった途端、高耶が転がり落ちる。車の中で気がついて、逃げる機会を伺っていたのだ。
そのまま逃げようとするのを、飛び降りた男達が捕まえて殴り倒した。
飛び起きようとする前に、再び殴られ倒れこむ。高耶1人に対し、大の男4人だ。どんなに暴れても高耶が逃れられるはずも無かった。

男達は一様に下卑た笑いを浮かべながら、高耶を引きずって廃工場に入ると、床に荷物のように投げ出した。

「っ痛!」
「腕と足押さえてろ」

里見がそう命令すると、他の男達が3人がかりで高耶を押え込んだ。

「はなせ!」

もがいても、細い高耶の手足では抵抗すらできない。
最後の1人が高耶のシャツを思い切り引き裂き、ズボンを引き降ろそうとする。

これから何が行われるのか、高耶には分からなかった。分からないことで、余計に恐怖を感じた。自然と涙が浮かんでくる。

「いやだ!触るな!」

知らない人間に体を触られる嫌悪感に、必死で身体をよじる。そのことが余計に男達を煽っていることも分からない。

抵抗の甲斐も無く服は剥かれ、高耶は全裸で押さえつけられた。
うつ伏せになった高耶の秘所に、突然男の指が滑りこむ。

「――――!」

何かぬるりとしたものが塗られる。
そして次の瞬間、身体を引き裂かれるほどの激痛が高耶を襲った。

(直江―――――!!)





[続]

紅雫 著
(2000.02.13)


[あとがき]
私の意識では、強姦は肉体、精神の両方に深い傷を負わせる最低最悪の暴力だと認識されております。ではなぜそれをやるのかというと、話の展開上必要だったからです。
…なんて言い訳してみたってやってることは変わらない(爆)。
高耶さんファンにはあるまじき行いだったかしら…。
しかも18禁にしたほうがいいのか?これ(爆)。
でもこの程度なら商業誌に載ってるから、平気、ですよね…?(←誰に聞いてるんだ)


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