【13】
「やべぇ!サツだ!」 2人の男は慌てて逃げ出した。 「逃すか!」
鮎川とその部下達が追いかける。 「なんだっ!?」 (高耶さん…っ!!) 直江は1人廃工場に駆け込んだ。鮎川も慌てて続く。
「…ちょろちょろと逃げ回りやがって」
怒気を滲ませて、里見は高耶を見下ろしていた。その手には鉄パイプが握られている。 「なんだ?」
里見が首を巡らせたとたん、高耶が走り出そうとした。 「逃がさねぇよ。てめぇには地獄を味合わせてやる」
引きつった笑顔を浮かべる。手に持った鉄パイプがゆっくりと振り上げられた。 (直江!!) 「高耶さん!!」
(高耶さんは…っ!?) 慌ててあたりを見回した直江の視界に、切り裂かれた高耶の衣服と血痕が入ってくる。 (高耶さん…!!)
怒りに目の前が紅く染まる。
高耶がうつ伏せに倒れこんでいる。 「高耶さん!!」
直江の絶叫に、男ははっとこちらを向いた。 荒く肩で息をする直江を、高耶は呆然と見ていた。 「なおえ…?」
その声にはっとして、直江は高耶を振り返った。そしてその無残な姿に愕然とする。 ふらふらと高耶に近づき、そっとその頬に触れる。 「高耶さん…」
何と言えばいいのかわからない。 直江の熱が、高耶の素肌に直接伝わる。 (熱い…)
直江が、いる。 そう思ったとたん、涙が溢れてきた。 「なおえ…っ」
泣きながら直江にしがみつく。 「もう、大丈夫だから。泣かないで…」
遠くに救急車とパトカーのサイレンが聞こえる。鮎川が直江にのされた男を連れていく。 こうして長い一日はようやく終わりを告げたのだった。
[続]
紅雫 著 [あとがき] 「高耶さん救出編」です。直江、最後の最後でようやく見せ場が(笑)。 いや、まあ殴り倒しただけですけど〜。それ以上やるとさすがに鮎川がかわいそうだし(笑)。 事件はこれで解決です。次は本当のエンディング。ここまで読んでくださってありがとうございました。そして次回をお楽しみに。 |
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